• 更年期女性外来

ご挨拶

院長 田中冨久子

院長 田中冨久子

「ホルモン補充療法は更年期だけの医療ではない」ということを書かせていただき、新年のご挨拶にしたいと思います。

私の診療所では更年期症状を女性ホルモン(エストロジェン)の補充で改善しようというホルモン補充療法を主たる医療目的で行っています。
また、たくさんの時間は割いていませんが男性の更年期症状を改善する目的で男性ホルモン(テストステロン)の補充という医療も行っています。
そのため、内科に加えて「更年期外来」という標榜も付けています。

女性の場合、更年期という期間は、日本人女性の平均50.5歳の閉経の前後10年間を指します。
この期間に女性ホルモンの血中濃度が急激に下がりますので、それまでこのホルモンが支えていた身体中の器官の働きに異常が生じます。私は、頭の先から足の先まで、とよく言いますが、本当に全機能に異常が生じて、いわゆる更年期症状が出現し、また、更年期障害という自覚のない身体の変化が生じます。この更年期症状は女性ホルモンを投与してやることで、見る見る消失します。

今年で更年期外来を始めて13年目になります。
これまでの医療を通じて、ある感想を持つようになりました。更年期症状は閉経後約5年間の症状であるはずですが、結論としてはそれでは治まらず、55歳を超えても出現しますので、5年間のホルモン補充では足りません。そして、更年期障害が一生残ります。
私の診療所を受診される女性で最近増えてきたのは、他医療機関で5年の補充で打ち切られてしまい、迷った挙句に当診療所に来られる方々です。
あるいは、10年でおしまい、と言われて来る方々も多いです。なぜなら、私は、「女性ホルモンは女性が生きている限り、女性の体を守るために必要」と考えていて、それらの方々にも、その方の年齢に応じた補充をして差し上げることにしているからです。

ただし、その補充の仕方は年齢により変化させています。50歳前後には、それまでかなり高濃度の女性ホルモンに支えられていた体の機能を何とかもとと同じレベルに維持するために高濃度のホルモンを、それも月経周期と同じように周期的に補充します。とはいえ、身体中の細胞にはどうしても老化が進行していきます。
そのため、私たちの身体全体の生理機能、身体活動にも老化が起こっていきます。それに応じて、必要ホルモンレベルが下がると考えられるので、ホルモン濃度を徐々に抑え、持続的にしていきます。

2022年は、老年医学の専門家が書いた60歳の壁、70歳の壁、80歳の壁、というような本がすごいベストセラーとなりました。
こんな風に10年ごとにホルモン補充療法を変化させて続けていけば、2022年に87.57年と発表された女性の平均寿命のうちの健康寿命を格段に延長できるのではないかと考えています。
幸い、私の診療所のある医療圏では、60歳以降の方々のホルモン補充も、「卵巣機能欠落症状」として保険適応が認められています。何しろ、女性が不健康寿命と呼ばれる要介護となる主な原因は、関節疾患、認知症、骨折・転倒、となっていて、いずれも女性ホルモンの欠乏がこれらの主要原因となっているので、この保険適応は女性の健康寿命を延ばすための大変重要な処置であると考えられ、その思慮ふかさは日本においては先端的なことと、とてもありがたく思っています。

本年も、皆さんにとって良い年となりますように祈念いたします。

田中クリニック横浜公園について

田中クリニック横浜公園の更年期女性外来では、ホルモン補充療法を更年期障害とその後の障害の根本療法ととらえて治療を行うとともに、漢方薬による治療、生活習慣の改善の指導などによる治療を行います。
男性医師にはなかなか相談しにくい・恥ずかしいなどで悩んでいる方、女性特有の症状を配慮し、女性医師が更年期診療を行います。

また、毎週木曜日には更年期男性外来も行っており「LOH症候群診療ガイドライン」に従って男性ホルモン補充療法など、症状に応じた診療を行っております。

糖尿病、脂質異常、高血圧などを中心とした生活習慣病(メタボリック症候群)や、風邪・頭痛・腹痛などの急性疾患に対する診療と共に、何科に行けばいいのか分からないなどのご相談にも応じます。
必要がある場合は、症状に応じて、最適な専門医療機関をご紹介させて頂きます。

更年期障害とは?

女性は生まれてから子ども時代を経て、思春期といわれる12歳前後で初めての月経(初経)を迎えます。その後、周期的な排卵と月経が30数年間、続きますが、40歳代後半から無排卵性の不規則な月経周期となり、50歳前後になると月経が永久に停止します(閉経)。閉経年齢は平均50歳で、一般に、閉経をはさんだ前後10年間(40歳代後半から50歳代前半)は更年期と呼ばれています。

更年期には、それまで卵巣で合成・分泌されていた卵巣ホルモンの分泌が減少し、ついには全く欠落する現象がおこります。卵巣ホルモンは女性ホルモンと一般に言われますが、卵胞ホルモンであるエストロジェン、とくに17ベーターエストラジオール(E2)※1と、黄体ホルモンであるプロジェステロン※2があります。エストロジェンの血液中の濃度が低下すると、①のぼせ、ほてり、発汗などの自律神経失調症状、②イライラ、抑うつ、不安などの精神的症状、そして、③手のこわばり、関節痛などの運動器症状、④性交痛、頻尿などの泌尿生殖器症状などなどを自覚するようになります。これらを更年期症状と言います。そして、これらの自覚症状をもたらす原因は、エストロジェン欠乏によって体と脳に起こっている病的な障害で、更年期障害と呼ばれます。
更年期症状は、女性の日常生活を、大変つらい、過酷なものにします。また、たとえ更年期症状を乗り越えたとしても、多くの場合は、さらに卵巣機能欠落症状として続きます。そして、更年期障害として始まった体と脳の病的な障害は、生涯、進行します。

※1 参考サイト 17ベーターエストラジオール(E2)厚生科学研究「畜産食品中残留ホルモンのヒト健康に及ぼす影響に関する研究」
※2 参考サイト プロジェステロン 札幌臨床検査センター

診療方針

 初診時に「問診票」と「SMI」という更年期のチェックシートを用い、症状の有無を確認します。更年期の症状は、卵巣ホルモン、特にエストロジェンの減少が背景にあることから、血液検査によって、E2の血中濃度とその分泌を支配する下垂体前葉ホルモンである卵胞刺激ホルモンFSHの血中濃度の動向を調べます。

また、更年期の症状は、甲状腺機能異常によるものとの鑑別が必要なため、甲状腺ホルモンであるT3とT4、加えて下垂体前葉ホルモンである甲状腺刺激ホルモンTSHの血中濃度も調べます。
さらに、脂質代謝の異常の有無を血中コレステロール/中性脂肪の測定により、糖代謝の異常の有無を血糖値、HbA1Cの測定により確認するとともに、骨密度や動脈硬化度を調べ、治療の方針を決めていきます。
なお、田中クリニック横浜公園では治療としてホルモン補充療法と漢方薬のどちらを選ぶかは患者様のお考えにしたがいますが、もし、ホルモン補充療法を選択される場合は、近年、ステロイドホルモン投与による血栓症のリスクが指摘されてきていますので、あらかじめ血栓に関する検査をさせていただき、治療中も定期的な検査を行います。

アクセス方法

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