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ご挨拶

院長 田中冨久子

院長 田中冨久子

 当院は2011年新年に開院いたしましたので、今年は丁度10年目になります。
これまでの9年間に、沢山の更年期の女性たち、また、女性に比べると少数ではありますが男性たちにお会いし、皆さんの卵巣や精巣が分泌する性ホルモンがどれほど重要な働きをしているか、そのホルモンが欠乏したり、消失するとどれほどに体調が狂ってしまうのか説明しながらホルモン補充療法に当たって来ました。

 昨年は、女性の体調不振の中で、特に「物忘れがひどい」という訴えが心なしか増えたこと、そしてこの不振はエストロジェンという女性ホルモンの投与でいとも簡単に正常化することに私自身が興味を惹かれました。これは、もしかしたら、最近増加していると話題になっている若年性認知症の発症と関係があるのではないかと推測したからです。若年型認知症の25%がアルツハイマー型であるとも言われています。

 もともと私は脳の研究者で、それも特に性ホルモンが脳機能に及ぼす影響を研究してきました。外国での研究ですが、卵巣を手術で摘除したメスのラットでは、脳内の、記憶中枢とされている海馬のニューロンの、他のニューロンからの情報を受け取る「棘=とげ」の数が激減してしまうこと、そして、そのメスのラットにエストロジェンを投与すると棘の数が元に戻るということが、神経科学という領域の教科書に載っていることも知っていました。

 私と研究仲間は、このように卵巣を摘除したメスラットの海馬では、アセチルコリンという神経伝達物質の分泌量が激減してしまうが、エストロジェンを投与すると元に戻る、ということを見つけました。アルツハイマー型認知症の原因の仮説として、アセチルコリンの分泌の減少が有力です。

 更年期に物忘れがひどくなっても、エストロジェンの補充なしに放置したら、本当に認知症への道を進んでしまう可能性があるのではないかと考えると恐ろしいことです。そして、そういう物忘れがエストロジェン補充でごく簡単に回復してしまうのを見ることは大変な驚きでもあるのです。今年は、更年期の物忘れと若年性認知症の関係について世界の情報の収集に努めていきたいと思います。

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更年期障害とは?

女性は生まれてから子ども時代を経て、思春期といわれる12歳前後で初めての月経(初経)を迎えます。その後、周期的な排卵と月経が30数年間、続きますが、40歳代後半から無排卵性の不規則な月経周期となり、50歳前後になると月経が永久に停止します(閉経)。閉経年齢は平均50歳で、一般に、閉経をはさんだ前後10年間(40歳代後半から50歳代前半)は更年期と呼ばれています。

更年期には、それまで卵巣で合成・分泌されていた卵巣ホルモンの分泌が減少し、ついには全く欠落する現象がおこります。卵巣ホルモンは女性ホルモンと一般に言われますが、卵胞ホルモンであるエストロジェン、とくに17ベーターエストラジオール(E2)と、黄体ホルモンであるプロジェステロンがあります。エストロジェンの血液中の濃度が低下すると、①のぼせ、ほてり、発汗などの自律神経失調症状、②イライラ、抑うつ、不安などの精神的症状、そして、③手のこわばり、関節痛などの運動器症状、④性交痛、頻尿などの泌尿生殖器症状などなどを自覚するようになります。これらを更年期症状と言います。そして、これらの自覚症状をもたらす原因は、エストロジェン欠乏によって体と脳に起こっている病的な障害で、更年期障害と呼ばれます。
更年期症状は、女性の日常生活を、大変つらい、過酷なものにします。また、たとえ更年期症状を乗り越えたとしても、多くの場合は、さらに卵巣機能欠落症状として続きます。そして、更年期障害として始まった体と脳の病的な障害は、生涯、進行します。本院では、ホルモン補充療法を更年期障害とその後の障害の根本療法ととらえて治療を行うとともに、漢方薬による治療、生活習慣の改善の指導などによる治療を行います。

診療方針

 初診時に「問診票」と「SMI」という更年期のチェックシートを用い、症状の有無を確認します。更年期の症状は、卵巣ホルモン、特にエストロジェンの減少が背景にあることから、血液検査によって、E2の血中濃度とその分泌を支配する下垂体前葉ホルモンである卵胞刺激ホルモンFSHの血中濃度の動向を調べます。

また、更年期の症状は、甲状腺機能異常によるものとの鑑別が必要なため、甲状腺ホルモンであるT3とT4、加えて下垂体前葉ホルモンである甲状腺刺激ホルモンTSHの血中濃度も調べます。
さらに、脂質代謝の異常の有無を血中コレステロール/中性脂肪の測定により、糖代謝の異常の有無を血糖値、HbA1Cの測定により確認するとともに、骨密度や動脈硬化度を調べ、治療の方針を決めていきます。
なお、治療としてホルモン補充療法と漢方薬のどちらを選ぶかは患者様のお考えにしたがいますが、もし、ホルモン補充療法を選択される場合は、近年、ステロイドホルモン投与による血栓症のリスクが指摘されてきていますので、あらかじめ血栓に関する検査をさせていただき、治療中も定期的な検査を行います。